かごしま環境未来館

更新日:2022年01月13日

2022年1月5日(水曜日)、南山大学・准教授の太田和彦先生をオンラインにてお招きして、スタッフに向けた研修が行われました。

スタッフ研修の様子

今回の研修の目的は、私たちにとって身近なテーマである「食」を切り口にし、環境問題を伝えることについての学びを深めるというもの。事前の準備として、スタッフは、2021年4月に発刊された書籍『みんなでつくる「いただきます」』から、太田先生が執筆されている章を含む数ページを読んだ上で臨みました。

書籍『みんなでつくる「いただきます」』の写真

書籍『みんなでつくる「いただきます」』、未来館にも蔵書があります。

太田和彦先生の紹介

太田先生は、食農倫理学、環境倫理学、風土論、シリアスゲーム研究などをご専門とされ、研究をはじめ、翻訳やイベントの主催、教科書の執筆など多岐にわたるご活動をされていらっしゃいます。太田先生の詳しいプロフィールは、下記をご覧ください。
太田和彦先生プロフィール(南山大学ホームページ)へのリンク

研修にて

研修では、事前にスタッフが提出した感想や質問に答えていただく形ではじまり、「持続可能で、持続可能に値する社会を考えるための6つのキーワード」と題してご講演をいただきました。環境問題のように、正解や明らかな解決策が存在しない「厄介な問題」は、状況が日々刻々と変化しています。また、さまざまな要素が絡み合っているため、全体像をつかむことが不可能に近いです。そのような問題に対して、「私たちはいったいどのようなアプローチをとることができるだろうか?」「持続可能な社会を作っていくために、何かできることはある?」など、研修では、そう考えたときの足掛かりとなりそうなヒントをいくつか教えていただきました。

  • バックキャスティング

私たちは「これをしようよ、これをしたらいいですよ」と提案されても、それを自分ごととして捉えることがなかなかできません。ところが、「あなたにとって10年後どんな未来になってほしいですか?そのためにできることはどんなことがありますか?」と訊かれると…どうでしょう?ぼんやりとかもしれませんが、なんとなく自分ごととして考え始めていませんか?

たとえば、私はよく自分の子どもに、「好き嫌いしないで、野菜も食べようね。」と言いますが、なかなか食べてもらえません。そこで思いついたのですが、代わりに、「どんなふうにして過ごしたい?」「元気に遊ぶためには何が必要かな?」とアプローチしたらどうでしょうか?子ども自身が自分で望ましい将来像を描けたとしたら、もしかすると子どもが自ら野菜を食べてくれるようになるかもしれません。

太田先生曰く、望ましい未来を考えたり、話したりすることは、行動変容のきっかけとなるそうです。これは、“望ましい未来をまず描き、そこから逆算して計画を立てる”=バックキャスティングという、SDGsに取り組むための視点にも通ずる考え方ですね。

  • デザイン思考

また、望ましい未来をバックキャスティングで考えるときのキーワードとして、「デザイン思考」や「ナラティブ」といった概念もお伝えいただきました。デザイン思考で持続可能な未来を考える場合、“現状を把握する→望ましい未来像をいくつか描く→描いた中からある望ましい未来像を選ぶ→その未来像を実現するために現状に介入していく”
というプロセスをたどりますが、この過程で、選択肢の幅を広げたりせばめたりしながら調整することが、環境問題のような難しい問題と向き合うときには不可欠だということです。

  • ナラティブ

さらに、未来館には、さまざまな年代や職業、バックグラウンドを持った方々が訪れてくださっていますが、たとえばそのような立場や価値観、関心の異なる多くの人々が同じ土俵に立ち、一緒に望ましい未来を考えていくためには、それぞれがどんな物語(ナラティブ)に関わってきたのか/関わっているのかを把握することも大切だということです。そのため、望ましい未来を語る場では、みんなで「すでにあるもの」と「まだないもの」を出し合い整理することで、より建設的に議論ができると教えていただきました。

研修を終えて

今回の研修を受け、なかなか普段の暮らしの中で、「こんな未来になったらいいな!」を考えることはなかったと気が付きました。ここ未来館でも、望ましい未来について考えられる場が作れたらいいなと感じました。偶然にも未来館と名付けられている当館のミッション、使命を再認識した90分でした。

今回教えていただいたことは、未来館のスタッフとしての質の向上に役立つことはもちろん、さまざまなことに通ずる考え方のベースとなるものだと感じました。ただし、それを実際の現場に活かしていくためには、それを解釈し、たくさんの実践を重ねていく必要がありそうです。これからスタッフそれぞれが感じたことをシェアし合い、さらに学びを深め、実践を重ねることで、今後の未来館での業務に活かしていきたいと思います。

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かごしま環境未来館

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